Cyclo-Cross World Championships 2007/Elite

ベルギー・Hooglede-Gits
1月28日 14:30スタート/60分間 

出走
三船雅彦(マトリックス)

3レースの轍が刻み込まれてはいるが、
路面の状態は、さらに乾き、改善している部分もある。
これまでで一番、スピードの上がるレースになるだろう。

前売り券だけで30,000枚を売り、
このために鉄道の駅まで作ったというところから
ベルギー国内の盛り上がりを計ることが出来るだろう。

コースの回りを幾重にも取り巻き
身動きが出来ないほどぎゅうぎゅう詰めになった観客たちは
スタートが迫るにつれ、次第に興奮の度合いを増して行く。

ベルギー国中から集結したサポーターたちは、
ベルギー選手の優勝を信じ、疑うことはなかったに違いない。
大切なのはベルギーの「誰」が勝つかということのようだった。
応援する選手の名前を掲げるベルギーサポーター、

オランダ、スイス、フランス、イギリス…
大きな旗を振り、カウベルを鳴らし、
ある意味、これから戦に行くような緊張感すらみなぎっている。

最有力は、世界ランキングで首位に立ち、今
シーズンのワールドカップの多くを制した
スベン・ネイス(ベルギー)。昨年は直前のW杯を制した
ベルベッケンがアルカンシェルを手に入れたが、
今年は同レースをネイスが制している。

さらに、激戦のベルギー国内選手権を制し、
最も波に乗っているバルト・ウェレンスは、
先のワールドカップで消耗を恐れ、3周でリタイアし、
このレースにかけて来ている。
昨年の世界選手権では「誰よりも強かった」と言われながら、
優勝を逃している。

ここにディフェンディングチャンピオンの
ベルベッケンがどう絡んでくるか。
先のW杯では、リタイアの決断が出来ないまま、
辛い表情で3位に食い込んだ。
防衛のプレッシャーもかかる中、
持ちこたえるパワーがあるだろうか。

一斉にスタート。
会場中から歓声が上がる。

最初に飛び込んで来たのは、オランダ人二人。
ネイス、ベルベッケンと有力どころが先頭に固まってきた。
これまでのどのカテゴリーと比べても、
段違いのスピード、段違いの迫力だ。

辻浦はいい位置で一周目に飛び出したようだ。
続いて、小坂、丸山、やや遅れて三船がやってきた。

日本でのシーズン序盤は体調不良に泣いたが
全日本選手権を5連覇し、
辻浦圭一は、今年もオランダにやって来た。
先のワールドカップでは、安定した走りを見せ、
25位という好成績を残している。

43歳、誰よりもクロスの経験の豊富な大ベテラン
小坂正則は、国内では不動の2位。
久しぶりに参加した前大会を完走し、今
年も世界選手権にやってきた。
国内3位の丸山厚は、ジュニア以来の世界選手権参戦、
ベルギーでプロロードレーサーの経験もある三船雅彦は
久しぶりにクロスでベルギーに戻って来た。

レースは、ウェレンスとネイスがリード。
ベルベッケン(ベルギー)、リシャール(オランダ)、
シミュネック・ラドミール(チェコ)、フランゾーイ(イタリア)、
ジョナサン・ペイジ(アメリカ)らが後に続く。

辻浦は、先頭集団から30秒程度の差を守っている。
かなり好調だ。

それぞれ、30秒差ほどで、小坂、丸山、三船がやってくる。


3周目、リシャールとラドミールが首位に立ち
ベルギー勢が追う。先頭の顔ぶれはほぼ変わらない。

辻浦は、少し先頭とのタイム差が開き、1分強。
まったく落ち着きを失うことなく、順調に周回をこなして行く。
40秒差で小坂、さらに40秒差で丸山。
三船は靴が壊れ、スリッパ状態になり、
階段や担ぎのシーンの度に、遅れを取ってしまったと言う。
無情にも、周回毎にタイム差が開いていった。

リシャールがトップを走り、フランゾーイ、ラドミール、
ペイジ…ベルギー勢のジャージが、軒並み後ろに下がった。

トラブル発生。

なんと、TVバイクがはじいた、プラスチック製のブロックが
ウェレンスにぶつかり、ウェレンスは引き倒され、
直後を走っていたネイスはそのウェレンスに乗り上げた。

難を逃れた、その後ろを走っていた選手たちが、
新たな先頭集団を形成したのだ。

誰よりも多くのレースを勝ち、
多くの選手をラップすることから
「人食い」の異名を取り、多数の熱狂的なサポーターを有する
ネイスだが、世界選手権だけに関しては
「勝つ運がない」ことでも有名である。

また、あの悪夢がよみがえるのか。
ネイスには叫びにも近い声援が投げかけられる。
差は25秒。
優勝を狙うには、小さいとは言えない差だ。

後に、ベルベッケンが続く。

さらに10秒遅れて、ウェレンス
誰よりもこの大会に調子が合った自負があっただけに、
動揺もひとしおだ。

ここから1分強遅れて辻浦がやってきた。
疲労の色も、焦りの色もない。
国内で見るのと全く同じ表情で、この世界選手権を走っている。

1分半ほど差を開けて、泥だらけになった小坂が現れた。
落車したらしい。
ただ、しっかりと前を見据えて、バイクを走らせる。
気力は萎えていない。どこまで落ち着いてリカバリーできるか…

そして20秒して丸山が、さらに1分半開けて三船がやってきた。

まもなく、トップのリシャールが現れた。
7分10秒台で回る先頭集団。
レースのペースは極めて速い。

リシャール、フランゾーイ、ペイジが走り抜ける。
ベルギー勢の圧勝を期待して集結したサポーターたちには
現実と認めがたい光景だ。

復調したベルベッケンが、すばらしい加速を見せ、
先頭を追撃し始めた。

先頭、リシャールから3分差、
同じペースで周回を回る辻浦。
そして、1分半後に、低く構えた小坂が現れる。
続く丸山。

3回の落車を繰り返したネイスは完全に戦線離脱。
リシャールが遅れ出し、
勝負は、フランゾーイ、ペイジ、そしてすばらしい追い上げで
先頭に上がって来たベルベッケンにしぼられた。

フランゾーイが遅れ、
決戦は、ペイジと、ベルベッケンの一騎打ちに。
ペイジが仕掛け、優勢かと思われる瞬間もあったが、
ディフェンディングチャンピオンであり、
開催国ベルギーを一身に背負ったベルベッケンの気迫が勝った。

最終周回、長い上りでアタックを仕掛け、
その後に延びる砂区間をうまく抜け出し、
ペイジとの差を開けることに成功。

一時はクロス王国、ベルギーの牙城崩壊の危機かと
気をもんだサポーターたちは、勝利に向かうベルベッケンに
絶叫とも、怒号ともつかない歓声を上げ、
会場は異様な熱気に包まれた。

すべての歓声をエネルギーに変え、独走態勢に入った
ベルベッケンはホームストレートに入ると、勝利を確信し、
ガッツポーズでフィニッシュラインを越えた。

2位になったジョナサン・ペイジは
ワースドカップ初戦の落車で手術を要するケガを負い、
今シーズンを棒に振り、来期のチーム契約もない状態だった。
このレースでは、誰よりも落ち着いたレースを展開、
精神、身体、センスとテクニック、さまざまな底力を示し、
アメリカに快挙をもたらした。

自国開催での大会でU23を制したフランゾーイは、3位に。
来年、イタリア、トレビゾでの大会開催を前に、
ポントーニ以来、タイトル奪取の可能性を示した。

哀れなウェレンスは、不屈の追い上げで4位となったが
手首を骨折していたそうだ。
ネイスは、もらい落車を繰り返し、11位に終わった。

辻浦は、ラスト3周でペースを落とし、最終的に35位でゴール。
これまでのどの大会よりも集中したいい表情をして走っていた。

最後のペースアップを受け、小坂は悔しい−1ラップの51位。
丸山も53位、本来の力を発揮できないままだった
三船は雪辱のDNFとなった。

これまでで一番よく走れた、と、
出し尽くしすっきりした表情の辻浦。

昨年の完走で満足し、ハングリーさを失った結果だと、
ラップされたことに悔しさを隠せない小坂。
これが自分の実力だと毅然とコメントした丸山。
不完全燃焼に終わった三船。

来年は、もっと強くなって帰ってくる。
それぞれがそう誓っていたに違いない




<結果>
男子エリート 

優勝 ベルベッケン・エルウィン(ベルギー) 1:05:35,5
2位 ジョナサン・ペイジ(アメリカ)  +0:02,7
3位 エンリコ・フランゾーイ(イタリア) +0:16,7

35位 辻浦圭一(ブリヂストン・アンカー) +6:47,2
51位 小坂正則(スワコレーシング) -1lap
54位 丸山 厚 (スワコレーシング) -1lap
DNF  三船雅彦(マトリックス)
ネイスとベルベッケン

辻浦圭一

ネイスとウェレンス

ペイジとリシャール

丸山厚

三船雅彦

トップのリシャール

ネイス

フランゾーイ

ネイスが遅れた!

さらにウェレンスも...

快調なペイジ

丸山厚

三船雅彦

小坂正則

辻浦圭一

観客で埋まり、全く隙間もない

表彰