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福島“兄弟”それぞれの想い 
        LOMBARDA 参戦を終えて


1.「偉大なおにいちゃん」福島晋一

最近、若手ががんばると、妙に嬉しいんですよ。
これって、選手としては、よくない傾向ですよね..。
『負けてたまるか!』ってならなくちゃいけないのに。
俺もトシを取ったってことかなぁ」
福島晋一は本当に嬉しそうな笑顔で語る。

今回、新生日本代表に参加しての率直な感想を、とお願いすると、
「楽しかったですよ、ホントに、楽しかった」
まっすぐに、答えが返ってきた。

レースを終え、合宿場に帰って来た晋一は、
くつろいだ様子で言葉を続ける。
「今回のこの計画は、価値があると思うんです。
日本の若い選手も伸びて来ています。
ヨーロッパに来るチャンスのない選手を連れて来て、
それで、強くなって、こっちのチームからも声がかかるような...
日本人選手にもそういう流れが出来たらいいですよね。」

今回のロンバルディアですけれど、
レベル的にはいかがでしたか?
「高かった、ですね。
イタリアは、ロードの「激戦区」ですから。
今回のコースはどちらかと言えば、
得意な系統のレイアウトだったんです。

ただ、自分の得意な展開としては
少人数のメンバーで逃げて
そのまま上りに入って、自分のペースをキープして
勝負する、という流れのものなんです。

今回みたいに、みんなで一斉に上りに突っ込んで...
というのは、やりやすいものではありませんでした。
上りがすごく速かったし。」

今回は一緒に走るのが初めてのメンバーもいましたよね?
「ええ、そうですね。
でも、気持ちよく走れましたよ
匠の成長もめざましいし、
アシストしよう、という石田の気持ちとかも
すごく良く伝わって来ました。
いいメンバーなのではないでしょうか。

まだまだ、始まったばかりで、
手探りな部分もあると思いますけれど、
何レースか走って行けば、みんなもっともっと
レース慣れして。強くなって行くと思うし、
ぜひ、こういうチャレンジを1回で終わらせないで
続けて行ってほしいですね。」

またいらしてくださいね、という私に
「ええ、自分もまた、ぜひ参加したいです。」
にっこりと「おにいちゃん」は微笑んで言葉を返した。



2.弟「康司」福島康司


合流初日。
移動の車で最後尾の座席に座る私をぐるりと振り返り、
彼は大きな目をさらに大きく開いて、私に言った。
「移動の時でも、なんでも、聞きたいことがあったら聞いてくれるかな?
聞いてくれることで、自分も嬉しいし、遠慮しないでいいからね」

振り返ったその真剣な表情に、いったい何があったのか、と
一瞬、ふっと身構えた私だったが、
いかにも、康司さんの思いやりだわ、と、
そのやさしさに、私も笑顔になってお礼を返した。

レースが終わり、合宿場に帰還して
「おにいちゃん」のインタビューを終えた私に、
彼は自分から声をかけてきてくれた。

ざっくばらんに今回の感想を聞いていたのだが、
彼には、伝えたいことがたくさんあるのだろう。
いろいろなことを語りだした。

「レースって、何があるかわからない。
もちろん勝つことは絶対に大切。
でも、命をかけて走っている分だけ、その日、その日、その瞬間を
大切にして行きたいんです。」

食事の時でも、レースの前でも、たとえ言葉がわからなくても、
彼は周りの人たちに果敢に話しかけ、自分のフォトカードを配り、
子供を抱きあげ、片言の言葉でも必死に口にして、交流しようとする。

「僕だって、自分のカードとか渡しても、内心
『こんな有名でない僕のカードなんか、欲しくもないだろうな』
って思ったりもするんです。
でも、お子さんとか、笑いかければ、笑い返してくれる。
人に挨拶して、現地の人と交流して、
そこのものを見て、食べて..そのすべてを楽しんで行きたいんですよね。」

正直、アグレッシブに交流を求めるかに見える彼の
こんなに冷静なコメントは、ちょっと、意外だった。

彼いわく、この姿勢は、フランスに来て、何もわからなかったとき。
強く『かわいがられるようにならなくっちゃ』と感じ
方法を模索したことから始まったという。

そして、偉大な兄、福島晋一の存在も大きかったはずだ。
兄弟で同じチームに所属し、同じ競技をしているとことについて、
そして、自分の存在価値はどこにあるのか、
これまでいろいろと考え悩んで来た、と彼は表情豊かに語る。

「後輩に、伝えて行きたいことがたくさんあるんだ。
僕は、フランスで何もわからなかったから、
ともかくいろんなひとに、いろんなものを聞いた。
何を食べて、どうトレーニングをすれば強くなるんだろう?
このヨーロッパの強い選手との『差』はどこから来るんだろう?って
同じことをすれば強くなるとは限らないけれど、
いろんなことを聞いてみれば、
その中から役に立つものは見つかるものだと思う。

だから、言葉はすごく大切だし、
自分が“何かを知りたがっている”ということを
理解してもらうことから、まず大切なんだ。

僕が、レースの最終局面になって、
無線が入らなくて、兄もそばにいなくて
何をしていいか全くわからなくなってしまったことがあって、
自分で考えることがどれだけ必要か、すごく良くわかった。
だから、若手の選手には、いろいろ聞いて来てほしいんだ。
それで、考えてほしい。
強くなることに、もっと貪欲になってほしいんだよね。」

兄弟揃って日本を代表するトップ選手である福島兄弟の間には
兄弟の絶対的な上下関係が、しっかり根付いている。
だが、二人とも同じように後輩の育成という使命を強く感じているようだ。

海外をベースに戦って来た分だけ、
確固たる日本人としてのアイデンティティーを持つ二人。

「おにいちゃん」も「康司」も、
この日本を代表するような若手を育成しようという動きの中で
意味のある存在になるに違いない。